i want,
そのまま軽く手を挙げて、ヒカルは背中を向けた。
その背中は、やっぱり昔と変わっていない。

あたしはしばらくヒカルの背中を眺めた後、駅の中へと足を進めた。


…大学二回の冬、あの悲しい出来事の後ヒカルと再会してから、もう丸一年がたとうとしていた。

ヒカルと再会してからどうなるか不安もあったが、思ったよりもお互い違和感なく『普通』でいることができた。

お互い関西にいるから気付いたら連絡も取っていて、暇な時はよくご飯を食べたり飲みに行ったりしている。
昔と同じようにヒカルの家でご飯を作って、一緒に過ごす。それが当たり前になっていた。

昔と何らかわりないあたし達がいる。


昔と違うこと。
それは、あたしがヒカルの彼女ではないということ。


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