i want,

「何で付き合わへんの?」

麻美が買ったばかりのポテトを口に頬張りながら聞いてきた。
丁度四限が始まったばかりのラウンジは、お昼時に比べれば閑散としている。

「別に…。だって、今更やん?」
「何が今更なん。元彼と再会して、いい感じな状態で、付き合わへん選択肢がありえへん」

麻美の隣で、理名もうんうんと頷いていた。
あたしは口元を尖らせて、紙パックのいちごみるくを飲んだ。

「別に付き合わんくても…」
「今のままでいいって?いいん?もし向こうに彼女ができても」
「いいっていうか…」
「いいやん別に。向こうもあおいも、お互い今フリーなんやし」

「いつ向こうに彼女ができるかも、わからへんやん」、そう言う理名に、今度は麻美がうんうんと頷いた。

ヒカルと再会した時、あたしには彼氏がいた。
年上の、大人な彼氏。まだ幼いあたしを包み込む優しさと包容力があった。

でもヒカルと再会して、あの頃の記憶が蘇り、あたしは今まで通りでいることが出来なかった。

思い出す。あの頃の感情、衝動、欲求。
そんな思いを抱えたまま、付き合い続けることは出来なかった。

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