i want,

二人が言うように、今、この感情を抑える理由はない。
ヒカルともう一度やり直すことを、考えないわけではない。

でも。


「今更、なんだよなぁ…」

家に帰り、ベッドに身を投げたあたしは、天井を見ながら呟いた。
手探りで棚の上の写真たてを掴む。あたし、ヒカル、綾、さと。まだ幼すぎるあたし達の笑顔。


あの頃。
ヒカルが欲しくて、ヒカルさえいればよくて、他には何も求めていなかった。

ヒカルとひとつになりたかった。個々の人間であることすら寂しかった。
どうしようもなく、ヒカルを求めていた幼すぎる日々。

あれから月日は流れて、あたし達は大人になった。ヒカルのいない時間も、あたしは確実に過ごしてきた。

今更。
今更、あの頃の二人に戻るなんて、そんなの。

「…ありえない、よね」

あたしはため息をついて、写真たてを元の位置に戻した。

あんなに幼くて、単純で、ただひたすらヒカルを想っていた自分。
そんな自分を、少し羨ましく思っている自分がいる限り、あの頃のあたし達に戻れるなんて、そんなこと無理だと感じていた。



















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