i want,
握りしめた手のひらに、嫌な汗が滲む。
何か言いたかった。
でも、言えなかった。
心臓が息苦しいくらいに動く。
垣枝を真っ直ぐ見ることができなくて、俯いて上履きの先に視線をやった。
でも何を見ているわけでもなかった。
…あたし、ショック受けてる。
違う、ショックとかじゃない。
胸が苦しくて、微かに震える。
傷ついた。
泣きたくなってる。
別に垣枝だからじゃない。
小さな頃、お父さんに思い切り叱られた時の気持ちに似ていた。
『本気でうざいんじゃ』
…誰かにこんなにはっきりと否定されたのは、初めてだったから。
軽くかわしたかった。
いつもみたいに、「うざいってなんじゃ!」って怒ってみたかった。
でも無理だった。
垣枝が違ったから。
ほんとに、怖かったから。
「ごめ…なさい」
かすれた声で呟く。
それしか言えなかった。
言葉が、見つからなかった。