i want,

ヒカルが煙草を吸い始めた頃。

変わっていくヒカルを恐れて、あたしはただ、がむしゃらにヒカルを追いかけていた。

「懐かしいなぁ」
「何が?」
「あの頃」

あの頃と形容したが、ヒカルにはちゃんと伝わってると思う。
ふうっと大きく息を吐き出して、「そうじゃの」と呟いた。

「ガキじゃったわ」

ふっと笑って、ヒカルは遠くを見た。
その横顔を見ながら、何故か少し切なくなる。

『ガキじゃった』

ヒカルはあの頃を、もう思い出に変えているのだろうか。

そして、あたしは。

「…ヒカルさぁ、」

呟いたあたしに、ヒカルは顔を向けた。
あたしはヒカルを見ずに、続ける。

「こういうとこ、来るんやね」
「こういうとこって?」
「カフェバーとか。女の子好きそうなとこ」

「たまにの」、そのヒカルの肯定が、尚あたしを締め付ける。
口が滑りやすいのは、酔ってるからなのか。

「連れてくる子、たくさんいるん?いいねーヒカルは。友達も、ヒカルかっこいいって言ってたよ」

嫌味にならない様に言ったが、言った自分が何だか虚しい。
やきもち?焦り?よくわからない感情が渦巻く。

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