i want,
「なんけ、それ」
「意外にもてるからね、ヒカルは昔から」
「みどとか以外にも、ヒカル好きって子いたんよ」、そう言いながら、そういえばそうだったな、なんて昔を思い出す。
あの頃のあたしの位置を、羨ましく思っていた子は確かにたくさんいたのだ。
「あたしはそんなもてた記憶もないし。合コンとかでもさ、可愛く酔っちゃったーとかできんのよ。キャラじゃないし?」
ははっと笑い、「だからこうやって、たまに一人になってんの」と呟いた。
別に、もてたいわけじゃないんだけど。
一人になることが嫌なわけでもないし、むしろこういう場では、たまに一人になりたかったりする。
あたしはそうでも、ヒカルは違う。
どこにいても、いくつになっても、気付いたら中心にいる様な存在。
そんなヒカルが、今は遠い。
「ええじゃ、別に」
ヒカルは煙草を消して、携帯灰皿に入れる。
立ち上がり、あたしを見下ろして言った。
「あおには俺がおるんじゃけ」
その瞳。見下した様な表情は、確かに既視感。
懐かしい、痛みを伴うあの視線。
押し寄せる痛みを、あたしは既に知っていた。