i want,
萎縮してしまったあたしに、垣枝は軽く溜め息をついた様だった。
ごくんと唾を飲み込む。
「…帰るぞ」
「え、だって…」
上履き、そう言おうとしたけど言えなかった。
顔を上げると、垣枝と目が合う。
少しだけ、視線の威力は弱まっていた。
「いきなし帰ったら、変に思われる…」
垣枝に言われた矢先にあれだけど、脳裏にみどのことが過った。
こんなの絶対、誤解される。
しばらくの沈黙の後、垣枝は軽く溜め息をついて石段に腰かけた。
今度は何を言われるのかと、少しだけ構える。
「…菊地のこと、ふったけぇ」
「…は?」
「さっきお化け屋敷出た後、告られたんじゃ。で、断った」
「…うそ…」
「なんで嘘言わんにゃいけんのけ」、葉っぱを千切りながら垣枝は言った。
そういえばさっき、みどがいなかった。
まさか告白してたなんて、誰が予想できただろう。