i want,
……………
ヒカルの家に着いたのは、8時過ぎだった。
「遅かったの」
「電車の接続悪くて」
「ほぅけ」、ヒカルは寝てたのか、くぁっとあくびをしながら言った。
電車の中、無駄に緊張を隠せずにいたあたしとは大違いだ。
というか、意識をしてるのは多分、あたしだけなんだけど。
「飯食った?」
「まだ。何か作ろうか?」
「いや、食ってないなら素麺がある」
ヒカルが指差した先には、素麺の束が3つ。丁寧に薬味まで用意してあった。
「どしたん、これ」
「会社の奴がくれた。最近ろくなもん食ってないっち話したら、食わなあかんやろって」
ヒカルが最近ちゃんとした食事をしていないことも知らなかったし、そこも気になったけど、あたしが意識を奪われたのはそこだけじゃなかった。
「それって…」
「女の子?」、聞きかけて、やめた。
だってあたしには、聞く権利なんかない。
あたしはヒカルの彼女なんかじゃない。