i want,
「ん?」
「いや、ちゃんとご飯食べとらんの?夏バテするよ」
「じゃけぇこうやって、あおと素麺食べようと思ったんやんか」
そう言ってヒカルは、鍋に火をかけて素麺をゆで始める。
あたしは冷静さを保ちながら、薬味を机に運んだ。
冷房がきいていない狭いアパートは、暑すぎる。
暑くて、呼吸が苦しい。
テーブルに素麺を並べて、麦茶を入れて、あたし達は夜ご飯の食卓についた。
「久し振りじゃのー、素麺」
「あたしも」
「1人じゃあんませんけぇね」、氷でよく冷えた素麺は、確かに久し振りな味だった。
「まだあるけぇ、また食いに来ぃや」
ヒカルが素麺を口に含みながら言った。
「うん」と、いつもの様に素直に言えない。
あたしはあまり聞こえないふりをしながら、麦茶を飲んだ。
何が変わったのかわからない。
でも今、何故かヒカルの前で普通でいられない。
普通って何だったっけ?
今まであたし、ヒカルをどう思ってたんだろう。