i want,
「あお、」
「へっ!?」
そんなことを考えていた時に声をかけられたから、思わず変な返事をしてしまった。怪訝そうなヒカルの視線。
「なんけ」
「え、ごめん、何?」
「いや…お盆、地元帰るか思って」
「あぁ…」
そっか。気づけばもう8月。その日暮らしだからか、暦の感覚があまりなかった。
「そういや綾が集まりたいって言ってたわ。ヒカル休みあるん?」
「丁度お盆の時期、休み取れたけぇ。帰るなら一緒に帰るか」
ヒカルの口から当たり前のように発せられる言葉。
意識しなければ何てことないのに。どうしても、ひとつひとつに反応してしまう。
「あお?」
「いや、うん、そーだね」
誤魔化したな。自分でもそうわかる様な曖昧な返事をして、少し後悔した。
こんなん、何か、あたしばっかり意識してるみたいで。
「…何け、さっきから」
そんなあたしの感情がただ漏れだったのか、ヒカルはため息をついて箸を置いた。
ガチャンと軽い嫌な音があたしの心臓を跳ねさせる。
「…なに?」
「こっちの台詞じゃろ。何け、さっきから曖昧な返事ばっかり。何かあるなら言えや」