i want,
膝までべたつく程しっかりと溢してしまっていたから、このままの格好でいることは到底無理だ。
ヒカルはクローゼットからスウェットとTシャツを取り出してあたしに投げる。
「シャワー浴びとき」
手にしたスウェットを抱えて、あたしはヒカルを見る。
ヒカルと目があって、心臓のスピードが加速した。
ヒカルはふっと笑い、「何もせんけぇ安心して入れや」と言う。
その言葉に、あたしの頬は一気に加熱した。
その表情を見られたくなくて慌てて立ち上がり、「か、借りるけぇ!」とお風呂のドアを開けた。
自分で思ったより勢いよくドアを閉めて、ひとつ大きく呼吸をする。
ドアに預けた背が、ひんやりして冷たい。
あたしはヒカルから受け取った着替えを抱き締めて、勢いのよすぎる心臓を落ち着かせようとした。
…中学生じゃあるまいし。
自分の幼すぎる戸惑いに、我ながら笑えると思う。
でも着替えから感じるヒカルの微かな香りが、今よりもっとヒカルと近かったあの頃を彷彿させて、より頬を火照らせるしかなかった。
その場にしゃがみ、スウェットに顔を埋める。
ヒカルがあの頃のまま側にいるような、そんな錯覚に、陥った。