i want,
ヒカルの側にいたかった。
ヒカルだけは変わらないであたしの隣にいると信じて疑わなかった。
あの幼い日々の感情は、今こんなにもはっきりと思い出せるのに。
「大人に…なりすぎたんかなぁ」
…大人になりすぎた。
あの頃より、感情の有無を知っている。
がむしゃらにただ欲求と衝動だけで動いていたあの頃。今はもう、先に考えることもできる。
だからこそ、動けなくなる。
自分に嘘をつけるようになる。
ただヒカルを求めることが、できなくなっている。
…不意にヒカルの瞼が動き、あたしはドキッとして手を退けた。
ゆっくりと上がるヒカルの瞼。現れた瞳は一瞬宙をさ迷い、あたしの瞳を捕らえる。
動けない。あたしはただ、ヒカルの瞳に呑み込まれる。
ぽたっと、あたしの髪の滴がヒカルの頬に落ちた。
「ごめ…」
あたしは慌てて指先で拭う。ヒカルの頬に触れた瞬間、言い様のない苦しさが発作の様に襲ってきた。
動かせずにいる指先。ヒカルはあたしのその手を、そっと握った。
どうしよう。泣きそうだ。
「…あお、」
かすれた声であたしを呼び、そのまま腕を引き寄せられた。
一瞬、体が反転する感覚に陥る。
背中に痛くない衝動を感じ、目を閉じた。
目を開くと、ヒカルが目の前にいた。