i want,


「なんで…ふったんよ」
「菊地のことは別に、どうも思っちょらんけぇ」
「でも、みど傷ついた…」
「ほしたら俺にどうせぇっち言うんじゃい」


…垣枝の言葉に、何も返せない。

正直あたしは、何をどう言えばいいのかわからなかった。

告白しようと思う程の気持ちもわからないし、第一告白したからどうなるかなんて想像もつかない。

付き合うの?彼氏彼女になるの?そうなったらどうなるの?今までと何が変わるの?


人を好きになるって、何なの?


「…垣枝は」
「なんけ」
「ほしたら垣枝は、誰が好きなん?」


垣枝が顔を上げた。

見上げる様にあたしを見つめる。

今度はあたしも、目を反らさなかった。



「…別に、おらんが」


張りつめていた糸が、少し弛んだ気がした。


「おらんのじゃ」
「そんなん興味ないわ。ちゅーか、好きな奴がおるんがそんなに偉いんけ」
「そんなこと言っちょらんじゃ」
「顔が笑っちょるわい。馬鹿にしちょるんけ」

言われて気付いた。あたし、頬も弛んでる。

「違うっちゃ」、否定しながら、安心した理由を考えていた。

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