i want,
あたしは視界にうっすらと幕がかかるのを感じ、前が見えなくなる前に立ち上がった。
ヒカルが視線を上げたのを感じたが、あたしはそれを受け取らない。
「…帰る」
かすれた声で呟いて、荷物を手にした。何か言ってくれるかと思ったが、ヒカルは何も言わない。益々喉の奥が痛い。
ヒカルの方を見ないようにして、あたしはヒカルの部屋を出た。
バタンというドアの音が、重く、あたしの気持ちの蓋を閉める。
痛いなら。苦しいなら。
もう、何も感じたくない。
何かを期待して、得ようとして、その反動があるのなら。
あたしは、何も望まない。