i want,
子どもながらに、必死に世界を創ろうとしていたあの頃。
中学という社会の中で、中心に立っていようともがいていた。
懐かしさの中に、少しだけ苦い味を思い出す。
遠く思い出に浸っていたら、綾があたしの肩をつんっとつついた。
「ん?」
「垣枝君、来ちょるよ」
少しだけ微笑んで言う綾。あたしの心臓は、一気に熱を帯びる。
綾がこっそり指差す方に視線を送った。
あたし達の向かいの席。田口、卓也の隣に座る、見覚えのある茶色い髪。
…ヒカル、来てる。
壁際に座り、方膝を立てて周りと談笑している。時折微笑む表情が、あたしの胸を締め付けた。
懐かしい顔触れ。昔を思い出す友達。
その中でヒカルだけ、懐かしさを纏っていない理由はわかっていた。
今のヒカルを、あたしは知っている。
昔より少しだけ柔らかくなって、それでいて、昔と変わらない衝動を与えてくるヒカル。
微かな胸の痛みを誤魔化す様に、あたしはビールを飲んだ。
「あお、垣枝君と向こうで会いよるんじゃろ?」
「…たまにね」
「聞いていい?二人って今…」
「別に、何もないよ」
綾が切り出す前に、あたしは軽く否定をした。