i want,

「普通の友達じゃって。最近は会っちょらんけど」
「そうなん?」
「うん。何も変わらんっちゃ」

下手に深い話にならない様に、あたしは努めて軽く言って笑った。

何も変わらない。ヒカルの中では、今のあたしと昔のあたしは別なんだ。

昔のあたしのポジションに戻ることは、もう、ない。

「そいやあお、就職どうするん?」

不意に卓也が話題をふってきたから、あたしは綾との話を一旦切った。
視線を上げると、卓也の隣の視線とかち合う。

今日初めて、ヒカルと目が合った。

どくん、と、心臓が跳ねる。
重苦しい痛みを誤魔化すかの様に、あたしはビールをぐっと飲んで言った。

「今、考えよる」
「こっちでも考えちょるん?」
「地元は…」

あんま考えてない、言おうとして、脳裏をかすった言葉。

『…あおの好きにしたらえぇが』

「…うん。地元も考えちょる」

ついて出た言葉に、自分でもびっくりした。
何故そう言ったのかはわからない。考える前に、綾と卓也が身を乗り出してきた。

「ほんまに!?帰ってくるん!?」
「あおが帰って来たらまた騒がしくなるなぁ!」

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