i want,
あーもう、お酒は控えよう。
そう思った瞬間、あたしの腕がぐいっと持ち上げられた。
ふらつきながら、何とか立ち上がる。
「どんだけ飲んだの」
はぁっとため息が聞こえた。
「た…ぐちぃ?」
ぼやけた視界であたしが言うと、田口はふっと笑ってあたしの腕を掴む手に力を入れる。
「ちゃんと立っててね」
そう言って、「俺が送るよ」と皆に言った。
「帰り道一緒だし、車で来てるし」
「あれ、田口君車?」
「飲んだから代行頼むけど」
「じゃあ安心か」、綾がほっとした声で言う。あたしは田口に体重を預けながら、それらのやり取りを頭のどこかで聞いていた。
…あの頃は、田口にこんなに心を許すなんて想像できなかったな。
小学生の頃、生意気な田口をあたしは好きになれなかった。
ヒカルとの仲を見透かされ、ヒカルは無理だと言った田口。今思えば、田口が嫌いだというより、あたしとヒカルを否定する田口が嫌いだったんだ。
『ヒカルは無理だよ』
絶対に大丈夫だという自信なんて、これっぽっちもなかったから。
「田口…」
「ん?」
「ごめんねぇ」