i want,
……………
地元の夜道は人一人通っていなくて、ヒカルの足音とあたしの鞄が揺れる音だけが夏空の下にゆっくりと響いていた。
「あお、落ちとらん?」
「…だいじょーぶ」
「ほぅけ」、ヒカルは小さく笑って、あたしをもう一度ひょこっとおぶい直す。
痛くない揺れがあたしの全身を包み込んで、何故だか胸が痛かった。
「どんだけ飲んだんじゃ、お前。珍しいの」
「だってぇ~、綾がぁ飲ますけぇさぁ~」
「西崎のせいにするねぇや」
「ごめん~」
あははっと笑うと、「笑い上戸じゃのぉ」とヒカルも苦笑する。
ヒカルと二人でこうやって話すのは久しぶりだった。
いつも何だかんだ言って家でご飯を食べることが多かったから、外でゆっくり歩くこともなかった様に思う。
「…久しぶりじゃの」
今思っていたことと同じことをヒカルが言うから、あたしは驚いて頭を上げた。
「久しぶり?」
「こうやって、みんなで集まるん」
あぁ、みんなで。あたしの短絡的思考が恥ずかしくなり、「ん」と肩におでこを埋める。