i want,
「どしたん?今日」
「ん?あおと一緒に地元帰っちょることなんかないけぇの。…探検しようか思って」
いたずらっ子の笑顔を見せるヒカル。幼い頃の面影が見え隠れした。
「探検?」
「おぉ。行くか」
首を傾げるあたしをよそに、ヒカルは校門のフェンスをよじ登る。
「え!?」と戸惑うあたしを、フェンスの上から見下ろしていた。
「入るん!?」
「そりゃ入るじゃろ。ほら、手」
んっと差し出すヒカル。大きな、かくばった手のひら。
小学生の頃。修学旅行で繋いだ手のひらは、もっと小さくて、柔らかかった。
とくんと小さく鳴る胸の鼓動は、あの頃と変わらないのに。
あたしはゆっくりと、自分の手をヒカルに向かって伸ばした。
…「何か全体がちっさいのぉ」
校庭を横切り、校舎の窓から教室を覗く。
「机ってあんなちっさかったかいなぁ」
「そりゃー小学生じゃけぇね。うちらあんなんに座ってたんやね」
「でっかくなったわぁ」、ヒカルは笑いながら窓ガラスをコツンと叩いた。