i want,
あの頃感じた、胸を引き裂く様な痛み、衝動、欲求。
全て変わらず、あたしの胸の奥に棲み着いている。
この痛みを今感じているのは、あたしだけなのだろうか。
ヒカルが今感じているのは、思い出だけ?
…聞きたかったけど、聞けなかった。
聞く勇気が、あたしにはない。
『付き合ってる人が、いる』
ヒカルと再会したあの日。
最初に拒んだのは、他でもない、あたし自身。
傷付く資格すら、ないのに。
「…あお、」
ヒカルがあたしの名前を呼んで、その声が、何か区切りのあるものだったから、あたしは一瞬構えた。
思い出から現実に、戻っていく。
「中学も、行ってみるか」
鉄棒に座ったまま、ヒカルはあたしを見上げて言った。
何か話が始まるのかと思っていたから、少し拍子抜けする。
でもヒカルの笑顔が余りにも優しいものだったから、あたしは少し間を開けて、「…うん」と頷いた。