i want,
目を閉じて、脳裏に浮かぶのは後悔の文字ばかりだった。
渡り廊下、ヒカルとの楽しかった思い出と同時に浮かぶ、別れの日。
ヒカルのその腕を拒んだのは、自分自身。
幼かった。
ただ、何もわかっていなかった。
ヒカルを失うということ。
その腕にもう、抱かれる事は二度とないんだということ。
15歳の喪失は、波の様に何度も寄せては引き、忘れかけた頃にまた寄せて、あたしに後悔を植え付けていった。
ヒカルが側にいないということ。
今なら、こんなにもはっきりとわかるのに。
…わかるのに。
「あお?」
頭上から聞こえたのはヒカルの声。
同時に、ガラッとドアの開く音がした。
そのドアは、何のドアだったのか。
「大丈夫け?どうしたん…」
「ごめんね、ヒカル」
あたしはしゃがんで膝に頭を埋めたまま、呟いた。
「ごめん、ヒカル」
「…何がや」
「あたし…ずっとずっと、自分だけを守ってた」
暗闇の中、ヒカルの表情が見えない。
見えないまま、あたしはただ、今の気持ちを全て吐き出した。