i want,
「あたし…甘えてたん。ヒカルがいることが当たり前になってて…ずっと、あの日のヒカルに甘えてた」
「…あの日って?」
『これは別れじゃないけぇ』
「ヒカルと別れて…初めて、再会した日。ヒカルが、どんな形であってもあたしを手放さないって言ってくれた日」
鮮明に思い出せる。
まるでただ居眠りしていただけだったかの様に、一気に溢れ出したヒカルへの感情。
それは今も、色褪せる事を知らない。
「ヒカルは…そう言ってくれたのに。ちゃんと言ってくれたのに。あたしは…あたしは、他の人の手を握ってしまったん。ずっと…逃げたのは、あたしの方だった…」
渡り廊下、ヒカルの腕を拒んだあの日。
再会して、ヒカルへの想いを封印したあの日。
全部、最初に逃げたのはあたしだった。
それはまがいもなく。
「傷つきたくなかったから。あたしが、傷つきたくなかった。ヒカルの事なんか考える余裕がなかった。ずっと…自分を甘やかしてた。だからこそ…今の関係も、壊したくなかったん。もう…もう、ヒカルを、なくしたくなかったから」