i want,


「そういやさ、もうすぐあおの地域の神楽じゃろ?」

真依がオレンジジュースを飲みきって言った。
あたしも口に含んだドーナツを飲み込む。

「あぁ、うん」
「今年、一緒に行く?」
「あっとねー、行きたいんじゃけど…今年、舞担当なんよね」
「うそ、まじで!?」

身を乗り出す真依と対照的に、肩を落として溜め息をつくあたし。

「最後の姫やるん?」
「んにゃ、最後は有希。あたしのが背高いから、衣装の都合であたしは始めの姫」
「へー!凄いじゃん!」

「凄くなんかないっちゃ」、カフェオレをずずっと飲みながら、口を尖らせた。


あたしの住んでいる地域には、小さな神社がある。
天照大神を祀っているらしく、毎年秋になると、小さな祭りと共に日本神話になぞらえた神楽を行うのだ。

その地区の人達、主に若い人達が笛や太鼓に合わせて境内で舞を披露するのだが、今年はその内の"天鈿女命(アマノウズメノミコト)の舞"の役があたしに回ってきた。

数多くある舞の内女性が舞うのは、その役と主役の天照大神の役だけで。
ラストに立て続けに舞われるその役は、一番華やかなものでもありメインと言っても過言ではない。

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