i want,
職員室前に差し掛かった時、ガラリとそのドアが開いた。
ドキッとして二人足を止めたが、出てきたのは先生じゃなく髪の長い女の人。
足元のスリッパやその雰囲気から、多分誰かの保護者だと推測できた。
次いで出てきたのは、あたし達と同じくらいの男の子。
少し背が低いこと以外は至って標準的な男の子だったが、その雰囲気は少し田舎の子どもとは違った。
「…転入生かね?」
有希がこそっと呟いた。
あたし達は壁際に隠れて、そっと観察する。
「ぽくない?だって見たことない顔じゃもん」
「なんかさ、背ちっちゃいよね」
「バカッ、聞こえる!」、有希の口を塞いだけど、時既に遅し。
お辞儀をしてドアを閉める女の人の横で、彼の目線が動く。
咄嗟に隠れたけど、確実にちょっと目があった。
「気付かれたじゃん!」
「ヤバ、もう行こ!」
こそこそと階段を駆け上がる。
踊り場で少し振り向いたけど、二人の影はもう見えない。
軽く安堵の息をつき、再び有希の頭をはたいた。