i want,
振り向くと、境内の横で有希が手招きをしていた。控え室が、境内の隣にあるのだ。
有希の声と同時に、さと達の視線もあたしに向かう。
最悪、心の中で呟きながら、頭を項垂れた。
「ほら、頑張ってきぃ!」
真依に背中を押され、泣く泣く頷いて「行ってきます」と呟く。
そのまま小走りで、有希の元に向かった。
境内の横で、さとに「何の準備するんけ?」と声をかけられる。
でもあたしは無視を決め込んで、有希と一緒に控え室に向かって行った。
「なんけ!無視すんねぇや!」
さとの叫び声に、少しだけ視線を向ける。
瞬間、垣枝と目が合って、思わず思い切り反らした。
そのまま一度も視線を向けることなく、控え室の引き戸を閉める。
扉に背を預けたまま、もう一度小さく溜め息をついた。