i want,


舞も終盤に差し掛かった。

全て順調に進んでいる。
緊張や興奮も徐々に冷め、落ち着いてひとつひとつの動作に気を配れた。


不意に太鼓のリズムが変わる。
同時に、境内の四方に向けて舞う舞い方に変わった。


今まではただ前だけを見ていればよかったけど、直に群衆に体を向ければ、自然と視線もかち合う。

それは丁度、西の方角に向いた時だった。




…周りの音が消えた気がした。



あたしの舞が止まらなかったのは、練習に練習を重ねて体がもう覚えきっていたからだろう。

他の群衆の視線とは明らかに異質なそれ。

自分は境内の上、群衆はその下。
確実にあたしは見下ろす形になるのに、その視線だけは、それを許さない。


睨み付ける様な視線。
あたしはただ、その視線を掴む。




…垣枝だった。




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