i want,
彼は微動だにせず、境内の上を見つめていた。
あの衝撃を、何と表せばいいのだろう。
いつもの小馬鹿にした視線じゃなかった。
見下した様なものでもなかでた。
ただ強い目力で、あたしの視線を捕らえるだけで。
その視線は、神器の音色と共にあたしの五感を奪う。
目が眩む。血が踊る。背中が走る。
あたしがこの夜を支配していた。
でも今、そのあたしを支配していたのは、垣枝の視線だった。
その瞬間、確かにあたしの中の何かが変わった。
欲求と畏怖が身体中を駆け巡る。
…耳をつんざく笛の音と、闇にちらつく火の粉が浮かぶ。
神がかった境内の上。
かがり火のスポットライトを浴びて、誰もの視線を集める中、ただあたしはその目を捉える。
鈴を鳴らす。
夜に舞う。
彼の視線はあたしを睨む。
あたしもまた、それを見下ろす。
もっともっと、あたしを見ればいい。
あたし以外を、見なければいい。
その睨み付けた視線は
あたしだけのものであればいい。
あたしは確かに、そう思った。
そう思う自分に、違和感すら感じなかった。