i want,

二人の笑い声が石段に小さく響いた。
それは裏山のうねりと境内のざわめきの中に、吸い込まれる様に消えていく。


「まぁ」、不意に垣枝が、流れる様に呟いた。


「綺麗じゃったわ。同級生がこんな綺麗な舞するんじゃなって」


「驚いた」、そう言う垣枝の表情は、あたしが求めたあの衝撃を備えてはいなくて。

目を見開いたまま、いつもと同じ垣枝の横顔を見る。



なのに何故だろう。

あの時と同じ様な、速い鼓動。



締め付けられる様な、心臓の甘い痛み。






「…真依達のとこ行かにゃ、」

赤くなった顔がバレない様に、急いで立ち上がった。

そのまま急ぎ足で歩きだしたあたしの背を、垣枝の声が追いかける。



「あお」


ドクンと、心臓が跳ねた。

呼ばれ慣れてるはずの名前が、どうしてか違うものに聞こえて。


「俺の名前、覚えちょる?」



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