i want,
かがり火の灯りも、境内のざわめきも、祭り囃子も。
全てが夢の様。そして垣枝は、それをかき乱す。
あたしをかき乱す。
「…わからんよ」
わからんよ、これ。
遠くに行って欲しいのに、かき乱さないで欲しいのに、相反する様な感情が支配する。
近付きたい。
あの衝撃に、もう一度触れたい。
触れたらもう、二度と離したくない。
あたしの五感を全て支配する様な、あの狂気に近い感情。
…欲しい。
あの感情の全てを、形あるものにしたい。
あたしだけのものに、したい。
空を仰ぎ見た。
薄い雲が覆う高い月。
求めない方が、きっと幸せだ。
それでもあたしは、無駄に手を夜空に伸ばした。
空を切って掴んだのは、秋の祭りの艶やかな残り香。
ほんの小さな、予感。