i want,
イヤホンから音楽が流れ出した。
同時に世界から、音が消える。
無声映画みたい。
たった1人、あたしは観客。
みどが鞄から可愛いポーチを取り出していた。
歩夢の鞄から出てきたそれは、色違いのお揃いで。
ポーチからは、歯磨きセットやコーム等、お揃いの品々が続々と出てくる。
みんなの笑顔を横目で見ながら、それらが『あれ』であることを知った。
あたしは『あれ』を持っていない。
ただそれだけ。
それだけで世界は、こんなにも変わるんだ。
なんとなく思った。
この修学旅行中、あたしはきっと、スクリーンの中に入れない。
多分ずっと、観客席のままだ。
視界の端でちらつくカラフルな小物達が鬱陶しくて、あたしは目を閉じた。
完全離脱。
観客でいることすら、もうめんどくさい。
…しょうもな。
心の中で、呟いた。