i want,


……………


「あお、ポッキーいる?」


真依が差し出してくれた赤い箱から、「ありがと」と一本ポッキーを抜き取った。

ざわついたバスの中。広島に向けて発車した三台のバスは、悠々と高速道路を駆けて行く。

バスの中での座席はあたしと真依、みどと歩夢で、多分それは、真依が気を使ってくれたからで。
まるで一年前の、ふれあいフェスタの時のあたしみたい。

たった一年前なのに、はるか昔の出来事のよう。


「あはっ、あお、ほっぺにチョコついちょるじゃ」
「うそ、どこ?」

「ちょっとまちぃね」、笑いながら真依は、鞄の中からポーチを取り出した。

青いそれは、やっぱり既視感。


『真依も持ってきたじゃろ?』


「…それ、」

思いきって聞いてみる。
真依も気付いて、「あ」と呟いた。

微妙な空気が二人の間に流れる。

意を決したのは真依の方だった。

「あお、さ」

軽く息をついてから、言った。


「みどと…何か、あった?」



< 73 / 435 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop