i want,
バスの中がざわついていてよかった。
あたし達の会話は、誰の耳にも入っていない。
答えかねているあたしに、真依は続けて言った。
「みどにね、皆で修旅の買い物行こうっち電話もらったんちゃ。『皆で』って言うけぇ、あたしてっきりあおも一緒じゃって思っちょったんじゃけど…」
初めて聞いた話だった。
でも十分、予想の範囲内。
「…ごめんね。買わんにゃよかったね、お揃いとか…」
「何言いよるんよ。いいって全然、気にしちょらんし。そこで真依だけ買わんかったら、それこそ変じゃあ?」
段々深刻になってきた真依に気付いて、あたしは敢えて明るく言った。
「それに…多分、あたしのせいでもあるけぇ」
ゴッと耳に轟音が流れ、バスはトンネルに差し掛かる。
バスの中は微妙なオレンジに変わった。
あたしは鏡となった窓に視線をずらす。
髪が伸びた。
背が伸びた。
一年前とは、やっぱり変わった。
でも、それだけじゃなくて。
「…垣が、関係しちょる?」
窓に映るあたしに向かってそう言う真依に、あたしは驚いて振り向いた。