i want,


思い出した。春休み、みどの家に友達数人で泊まった時、定番の告白大会でその名を一度だけ耳にしていたんだった。

『みどね、垣が好きなんよ』

「なに、同じクラスなん?」
「キョロキョロせんでっ、ばれる!」

あたしの肩を揺さぶるみど。
その『かき』という人物をあたしは知らないから、見渡してもわかるはずない。

みどと『かき』は、一、二年で同じクラスだったらしい。

「あははっ、冗談っちゃ。ええよ、替えちゃげる」

あたしは笑いながらその紙切れをみどに差し出した。
正直、さとと隣じゃなかったら席はどこでもいい。

さとの隣だと、絶対授業中注意されるし。

「ほんま!?ありが…」
「不正禁止ー」


突然、後ろから声が届いた。
思わず心臓が跳ねる。

ゆっくり振り向くと、一人の男の子が立っていた。

身長はそんなに変わらないのに、その見下げた様な視線。


…一瞬、吸い込まれたかと思った。


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