氷の女王に口付けを
そんなことして、あの選手は楽しいのだろうか。
俺だったら楽しくない。
純粋にフィギュアを楽しめない。
リンクに視線を戻すと、美優はバッククロスの態勢でリンクの壁際を滑っている。
後ろをきちんと確認して顔を正面に戻すと、対向に例の選手もバッククロスで滑ってきた。
本当だ、美優のジャンプコースにしつこく入ってくる。
当たり屋の噂を本当かもしれない。
二人の距離が縮む。二人ともかなりのスピードを出しているから、早めに回避しないとぶつかりそうだ。
「あれ?」
美優はそのままルッツの姿勢に入る。
もしかして、気付いてない?
あの選手も、スピードを落とすどころかグングンとスピードを上げていく。