氷の女王に口付けを
一安心一安心。これで安心して日本に帰れる。
「でもさ、まさかこの歳になってタクちゃんからあの言葉を貰うなんて思ってもみなかったよ」
ベッドの上で胡坐をかきながら、ニシシと笑う。
あの言葉って、六分間練習の時のあれか。
I will be angry if it gives up!
『諦めたら怒るぞ』
文法もめちゃくちゃな英語。
そりゃそうだ。だってこの言葉を初めて喋ったのはまだ小学生の頃なんだから。
「あれってさ、私が初めてノービスの試合に出たときに、タクちゃんが観客席にから叫んだんだよね。あの時の私ガチガチに緊張しちゃっててさぁ」
「酷かったよな。足なんかプルプル震えて、まるで生まれたての小鹿みたいで。コールされたのにリンクの壁から離れなくて、先生が凄く困ってたっけ」
「それでタクちゃんが言ったんだよね。『I will be angry if it gives up』私そんとき英語なんて全然わかんなかったから、凄く応援されてるんだなーって思ってたんだけど……」