氷の女王に口付けを
師弟関係
「おしかったですね」
久々に馴染みのスケートリンクに行くと、龍君が練習をしていた。
龍君はノービス(ジュニア以下)の選手で、ロシア人と日本人のハーフである将来有望な男子選手。
俺が所属していたスケートクラブの後輩で、今でもたまに顔を出しては一緒に練習したりアドバイスをしている。
龍君は俺の姿を見つけるやいなや抱きついてきて、青い瞳で俺を見上げながらあんなことを言ったのだ。
ちょっとだけ心にナイフが刺さったのは、彼には内緒だ。
アメリカ大会で周りの選手がミスをしたこともあってSP二位と好位置に付いた。
だがやっぱり世の中そんなに甘くはなく。
フリーで3Aのミスが響いて、総合四位という結果に留まった。
まあ、シニアの国際大会で初めて入賞したから嬉しかったには嬉しかったけど、有力選手がたまたま少なかったアメリカ大会で表彰台に上りたかったという想いはあった。
だけどそれは俺以上にコーチの方が想っていたらしく、帰国するまでの飛行機の中でグチグチとお説教されたのは良くも悪くも思い出になっている。