氷の女王に口付けを

「龍君……ははっ、面白い冗談だね」


「冗談じゃありません! 僕は本気です!」


真剣な眼差しに射ぬかれる。


どうやら冗談ではないらしい。


けど、なんで俺?


龍君なら黙ってたって、コーチの方から寄って来る。


それこそ今だって、色んなクラブから引き抜きの話が出ているくらいだ。


俺なんかが龍君の振り付けをしたら、龍君の才能を潰しかねない。


答えはもちろん。


「龍君ならきっとトップクラスの振付師が付けるよ。俺なんかで妥協しちゃダメ」


途端に龍君の表情が破綻する。


今にも泣きそう。
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