氷の女王に口付けを
俺なんか一度もシニアの国際大会で表彰台に上がったことがない三流選手だよ。
振り付けだって今期からは有香さんという振付師を付けているし、俺の振り付けなんて対したことないよ。
などと説得したのだけど、
「だけどベースはタクさんが考えたんですよね? この前佐藤先生が言ってましたよ」
先生、余計なことを後輩に教えないでください。
「だけど俺も一応選手だし、龍君に構ってあげられる時間なんて……」
語尾を濁すと、みるみる龍君から笑顔が消える。
あわわっ、そんな悲しい顔しないでよ。俺なんかのどこがいいのさ。
「そう、ですよね。タクさんは世界で活躍するトップスケーターですもんね」
「いや、活躍してないし底辺スケーターだと思うけど?」
「わがまま言って、ヒック、ごめん、グスッ、なさい……」
「あああ!? 泣かないで龍君!」