氷の女王に口付けを
完璧に跳ぶのは難しいだろう。
というか、跳べるんなら最初から入れてるだろうし。
上手くいけば、タクが表彰台のてっぺんに昇ることだって十分考えられる。
……本人に自覚がないのが痛い所だが。
けれどもしナショナルタイトルが取れれば、タクの自信にも繋がり、五輪の代表選考委員にも十分過ぎるアピールになる。
そのためにも、ジャンプミスは決して許されない―――
六分間練習では良い動きを見せていた。
バックヤードで時を待つ。
廊下に無造作に設置されたテレビ画面には、第三滑走者である羽生が映っていた。
タクの視線が画面に移る。
集中力が乱れるから他の演技を見せたくないが、今下手に声をかけても乱れるから放置しておこう。
羽生の演技。この演技の出来で、表彰台の景色が変わってくる―――