氷の女王に口付けを
気を取り直してもう一度3A。
しっかり漕いで助走をつけて、タイミングを見計らい……。
―チャーチャラチャーチャラッ―
いざ踏切へ。という所でリンク内に寂しく響く謎の着信に気をとられ、タイミングがズレた俺は空中で一回転半回り、着氷も乱れてコケてしまった。
「痛ったぁ~」
誰だ、着メロを『おどるポンポコリン』に設定している人は!
音のした方向へ視線を送ると、入口から人影が見える。
バックヤードからのっそりと登場した人物は、白いシャツにジーンズという格好で、ケータイを耳に当てて英語で会話をしていた。
本田コーチ。着メロ、ちびまるこちゃんだったんですね……。
なんか、見ては(聴いては)いけない所に遭遇しちゃったかもしれない。
会話を終えたコーチはケータイをポケットにしまうと、サングラス越しに俺を睨みつけているようだった。