氷の女王に口付けを
恐いです。ただのヤクザですよコーチ。
「久しぶりだな。早速だが、俺はこの後名古屋へ飛ぶ」
「はい?」
「というわけだ、一人でしっかり練習しておくように」
「え? ちょっとコーチ!」
俺に一目だけくれて、さっさと帰って行く本田コーチ。
名古屋に飛ぶって……折角リンクにまで足を運んだのなら、ちょっとぐらい見てもいいじゃないか。
「……俺、あの人について行って大丈夫かな?」
大丈夫じゃなかったとしても、今さらコーチは変えられない。
どうしようもない不安と戦いながら、俺はリンクの上でポツンと突っ立っているのだった。