氷の女王に口付けを
けれど美優に酷いことを言ってしまったことは事実なので、これ以上強く言いきることも出来ず、俺は苦虫を噛みしめた。
クッソー。なんて弱いんだ俺。
はぁと溜息を一つ。
美優はクスクス笑って、紺青の空を仰ぎながら話題を変えた。
「だけど、タクちゃんの仮面舞踏会は圧巻だったなぁ。完全に物語の主人公になりきってたよね。過去最高の出来じゃない?」
「そうだな。自分で言うのもなんだけど、あれは本当に良くやったと思うよ」
全日本の結果は、最終的に二位。
けれど羽生さんとはたったの0.1ポイント差の僅差中の僅差だった。
技術点では俺の方が僅かに上だった。
だけどやっぱり演技構成点で点差が開いた。
PCS七点台後半の羽生さんに対して、俺は七点台前半。
やっぱり実績がある羽生さんと、シニアで未だにメダルを取っていない俺とでは、立っている土台が違う。