氷の女王に口付けを

けど、国内大会とはいえオール七点台は初めてのことだった。


それってやっぱ俺の表現力が上がった、ということで解釈してもいいはずだ。……おそらく。


それに（ミスがあったとはいえ）四回転を完璧に跳んだ羽生さんに、四回転なしの俺が技術点を上回ったのも純粋に嬉しかった。


やっぱコーチの言うことは聞くもんだなーって、ちょっとあの人のことを見なおしちゃったり。


二位に入ったことで、二月に行われる四大陸選手権と三月の世界選手権の出場権を得ることができた。


四大陸選手権はヨーロッパを覗いた四つの大陸の選手が集まる国際大会。


歴史が浅く世界選手権の一か月前に開かれる大会のため、海外のトップ選手の中には嘘の診断書を使って出場辞退する人もいると噂されているが。


俺みたいな若手な選手には、自分をアピールする決行の機会。


一つでも多くの試合に出て、経験と実績を積みたい俺には、この二大会の出場は大きい。


もっともっと、プログラムの質を磨いていかないと。


「自分に厳しいタクちゃんがそこまで言うなんて、本当にあのプロは気に入ってるんだね」