氷の女王に口付けを
「はにゅーboyの考えていることは分かるわ。結論から言えば、答えはYesよ」
あっさり言われるもんだから、呆気に取られてしまった。
まだ一言も喋っていないのにあっさりオッケー。
怪しい。なにか企んでいるに違いない。
タラソワ氏は妖艶に微笑むと「but」と言葉を続けた。
「私の元でフィギュアをやりたいのなら、はにゅーboyにやってもらいたい仕事があるの」
「仕事、ですか?」
「Yes。ご存じだと思うけど、私はみゅーを五輪チャンピオンに育て上げるわ。まあ、あの子はすでに完成系に近いから、私が手を加える所なんてほんの僅かしかないだろうけどね」
タラソワ氏にここまで言わしめるとは、本当にミューちゃんは天才スケーターなんだ。
確かにミューちゃんは完璧だ。弱点なんて見当たらない。
まさに天才と呼ぶにふさわしい。
「けれど、あの子にも決定的な弱点があるわ」