氷の女王に口付けを

「ミューちゃんに弱点?」


「LOVEよ、LOVE」


……LOVE?


この人はさっきから何を言いたいんだ。まどろっこしくてイライラしてきた。


俺のイライラが多少は伝わったのか、タラソワ氏は眉を下げて困ったように微笑した。


「聞いた話では、みゅーはこれまで恋愛をしてきたことがないわ。今はまだいいけれど、きっとそれが彼女の最大の弱点になりうる。
だからといって、変な男に騙されてスキャンダルにでもなったら一大事。ただでさえ日本のマスコミは異常だから、下手をすればみゅーは一生滑れなくなるかもしれない。
妊娠なんてもっての他。100年、いいえ1000年に一度の逸材を私は守りぬかなければならないの」


貴方は勘が鋭そうだから、これだけ喋れば分かるわよね?


最後にそう付け加えて、彼女は俺を見つめた。


なるほどね、そういうことか。


つまりミューちゃんに恋愛経験をさせることによって、少女から女性へと脱皮させて演技の幅と質を向上させたい。
< 196 / 214 >

この作品をシェア

pagetop