氷の女王に口付けを
「ミューちゃんに弱点?」
「LOVEよ、LOVE」
……LOVE?
この人はさっきから何を言いたいんだ。まどろっこしくてイライラしてきた。
俺のイライラが多少は伝わったのか、タラソワ氏は眉を下げて困ったように微笑した。
「聞いた話では、みゅーはこれまで恋愛をしてきたことがないわ。今はまだいいけれど、きっとそれが彼女の最大の弱点になりうる。
だからといって、変な男に騙されてスキャンダルにでもなったら一大事。ただでさえ日本のマスコミは異常だから、下手をすればみゅーは一生滑れなくなるかもしれない。
妊娠なんてもっての他。100年、いいえ1000年に一度の逸材を私は守りぬかなければならないの」
貴方は勘が鋭そうだから、これだけ喋れば分かるわよね?
最後にそう付け加えて、彼女は俺を見つめた。
なるほどね、そういうことか。
つまりミューちゃんに恋愛経験をさせることによって、少女から女性へと脱皮させて演技の幅と質を向上させたい。