氷の女王に口付けを

もう駄目だ。なんか頭痛も起きてきた。


真冬だというのに、何故か身体がポカポカする。


テンパって視線をキョロキョロと忙しなく動かしていると、プッと空気が抜けるような音がした。


「アハハハッ! タクちゃんすっごい顔真っ赤! ひひひ、お腹ひたい……」


目の前の女の子が急に笑い出すもんだから、さらに俺の思考回路は追い込まれていく。


美優はお腹を押さえながら、右手の人差指と中指を立てて俺の眼前に差し出して、二本の指の間をピッタリと閉じた。


目がしらには涙が溜まっている。


「これで唇の完成。クククッまさか本当に、プッ騙されるなんて……」


唇の完成? 騙される?


じゃあなにか、この女は俺のことを騙しておちょくってたのか?


確かによくよく思い出せば、あの感触はどことなく違和感があった。


だけどキスなんてしたことなかったら、きっとこんなもんだろうと思って―――
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