氷の女王に口付けを
「だから作戦だよ作戦『ミューちゃんが落ち込んでいるときに颯爽と現れて、彼女の涙を拭いてあげよう大作戦!』だよ〜」
美優の名前が出た瞬間、大介の動きが止まった。
羽生は口の両端を釣り上げ、自分が作り出した作戦を大介に伝える。
「女の子はね、弱っているときに優しくされるとコロッといっちゃうの。だから試合で優勝できずに落ち込んでいるミューちゃんの元にチビ介が現れて……。という作戦なんだけど、我ながら素晴らしいなぁ〜」
自画自賛。
要するに羽生はこの体験談を実際に大介が再現して、美優のハートをガッチリ鷲掴みにしてやろうということなのだ。
だが大介の表情は浮かばれない。
それもそのはず、
「ミューさんがフィギュアで負けるわけねーじゃんか」
彼女は『絶対女王』の異名を持つ、史上最強の女子フィギュアスケーターなのだから。
この作戦で重要なのは、美優が試合で負けるということが絶対条件。