氷の女王に口付けを

有香さんは去年から私の振付師をしてもらっている元フィギュアスケーター。


世界選手権で優勝した経験もある私の憧れの人でもある。


タクちゃんから昨日届いたメールには「有香さんに会う機会を作ってくれ」というものだった。


「でもなんで有香さんに会いたいの? タクちゃんほとんど面識ないよね?」


「面識ないから頼んだんだよ。ちょっとワケありってやつでさ」


はははっと乾いた笑いを零す。


なるほど、この笑い方は本田さん絡みというわけか。


「また本田さんに何か言われたの?」


「うっ。まあ、そうなんだけどさ」


と口火を切って、タクちゃんは事の経緯を語りだした。


―――なんていうか、本田さん仕事しろ。
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