氷の女王に口付けを
衣装だって先輩スケーターやコーチが昔使っていたお古を手直しして着ているし、リンクだって知人のリンクや学校のリンクを使ってお金を浮かしているしまつ。
ただでさえフィギュアスケートはお金がかかるのに、高額な振り付け料なんて絶対に払えるわけがない。
「俺にできることならなんでもします」
そう虚勢を張ってみたが、実際俺に出来ることなんて物凄く限られているわけで。
じっとりと、手に汗を握っている。
有香さんは俺の心境を知っているのか知らないのか、フェンスから身を乗り出して俺の耳元に顔を近づけた。
「ミューの男を探してほしいの」
―――美優の男?
「あの子最近色気づいてきてね、これはきっと男がいると私は思うの」
えーと、男とかってどういう意味?
「だけどああいう子って、彼氏とかできるとドップリ嵌っちゃうタイプだと思うわけよ」