氷の女王に口付けを

ならば演技構成点で世界と戦おうという作戦というのもあるが、これまでTESの強化ばかり目をつけていたせいでPCSが疎かになっていたので、今期の内に強化しようというのが最大の目的。


そのためにも、ストーリー性がある仮面舞踏会を選んだ。


「舞踏ねぇ……貴方、今まで役になりきって滑ったことある」


「まあ一応は。あ、でも、今までストーリー性がある楽曲を使ったことがほとんどないので、どちらかというと音や雰囲気を表現する方が多かったかも知れません」


「音を表現か……」


有香さんは眉間に皺を寄せたまま、なにか思考を巡らしているようだ。


有香さんにはああ言ったけど、実の所本気で役になりきって滑ったことはない。


いや、なりきろうとしたんだけど、実際試合で滑っているとエレメンツに夢中になって、演技する所まで意識が集中しなかったというのが正解だ。


演技力うんぬんよりも、まずは不屈の精神を鍛えることが先決かも知れないな、なんてこっそり思ってみたり。


「じゃあショートの死の舞踏だけど、今回はどのような役を演じようと考えてるの?」


「役、ですか?」
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